【養育費の保全処分と23条照会】弁護士会照会申出時に債務名義は不要になる?【R8.4.1施行】のコピー

 

家族法改正で変わる弁護士会照会(23条照会)
― 法定養育費・養育費先取特権と
債務名義の運用見直し
改正民法 令和8年4月1日施行予定 / 最終更新:2026年6月
令和6年に成立した家族法改正により、
養育費債権に一般先取特権が付与されます。
これに伴い、保全申立て前の預貯金調査を
目的とした弁護士会照会(23条照会)では、
従来必須とされてきた債務名義がなくても
受理できるよう運用を見直す動きが
進んでいます。本記事では、その背景と
実務上のポイントをわかりやすく解説します。
📋 この記事でわかること
✅ 弁護士会照会(23条照会)で従来
  求められてきた債務名義の役割
✅ 家族法改正による法定養育費・
  養育費先取特権の新設内容
✅ 先取特権が実質的な執行根拠となり、
  債務名義が不要となる理由
✅ 保全申立て前の預貯金調査における
  照会フローの見直し
✅ 改正対応で実務上注意すべきポイント
弁護士会照会(23条照会)と債務名義の従来運用
弁護士会照会(23条照会)は、
弁護士が受任事件について、所属する
弁護士会を通じて公務所や企業などに
必要な事項の報告を求める制度です。
預貯金の有無や残高、取引履歴などの
財産情報を調べる手段としても
活用されてきました。
これまでの実務では、財産調査を目的と
する照会について、原則として
債務名義の存在を
前提とする運用が基本とされてきました。
保全を目的とする案件では、調査を
担当する委員会の審議を経て、
受理の可否を判断する取扱いが
一般的でした。
債務名義の典型例として
想定されてきたのは、次のようなものです。
✅ 確定判決
✅ 仮執行宣言付判決
✅ 調停調書・審判書
✅ 執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)
家族法改正のポイント ― 法定養育費と養育費先取特権
民法等の一部を改正する法律
(令和6年法律第33号)
は、
令和6年5月17日に成立し、
同月24日に公布されました。
施行日は令和8年4月1日
(2026年4月1日)
とされています。
養育費債権への一般先取特権の付与
今回の改正で重要なのが、
養育費等の請求債権への
一般先取特権の付与
です
改正民法306条3号)。
一般先取特権とは、他の債権者に優先
して弁済を受けられる法定の担保権です。
📌 一般先取特権が付与されることで、
調停や審判などの手続を経て
債務名義を得ていなくても、
担保権の実行として
相手方の財産から養育費を回収できる
道が開かれます。
法定養育費制度の創設
あわせて、養育費の取決めがないまま
離婚した場合でも、一定額の養育費を
当然に請求できる法定養育費
制度
が創設されます。
こうした債権についても、立証は
原則として戸籍などの
資料で足りると整理できます。
⚠️ 注意点として、法定養育費は、原則として
施行日(令和8年4月1日)
以後に生じた債権
が対象です。
施行日前の滞納分には適用されない
場合があるため、対象範囲の確認が
欠かせません。
債務名義必須の運用が見直される理由
ここで実務上の問題となるのが、
先取特権付きの法定養育費には、
従来型の債務名義が存在しない
ケースがある、という点です。
この点については、先取特権
そのものが執行の根拠(実質的な
債務名義)として機能し得る

との見解が確認されています。
法定養育費の立証も戸籍で足りると
整理できることから、債務名義の
有無のみを理由に照会を却下するのは
適切でない、と考えられます。
✅ 「債務名義がなければ受理しない」
という一律運用をそのまま適用すると、
本来保護されるべき法定養育費
案件が不当に却下される

リスクがあります。
✅ そのため、照会の基準となる文言や
手続フローを見直す必要があります。
こうした背景から、弁護士会の審査
基準を改定し、先取特権付きの
法定養育費を例外的に受理可能

する方向で整理が進められています。
必要な証拠を戸籍等に限定し、
照会の要件を明確化することも
検討されています。
保全申立て前の預貯金調査と照会フローの見直し
養育費の回収では、保全申立てや
強制執行に先立って、相手方の
預貯金を調査する必要が
生じる場面があります。
このとき、提出資料として債務名義が
存在しないことが、従来運用の下では
ネックとなっていました。
従来の「残高照会→履歴照会」の段階制限
従来の照会手順では、まず
残高照会を行い、
残高が少ない場合に限って
履歴照会へ進む、
という段階的なフローが採られて
きました。これは、旧来の財産開示
制度における「まず差押えを試み、
空振りなら次へ」という発想に
近い設計といえます。
制度 取引履歴の取得 資産追跡
財産開示 不可 限定的
23条照会 可能 優位
財産開示では取引履歴までは取得
できないのに対し、23条照会は
履歴の取得が可能であり、
資産追跡において優位性
あります。段階制限が現在の実務や
法改正の趣旨に合致していない
可能性が指摘されています。
📌 そこで、「残高が少ないときだけ
履歴へ」という段階制限を見直し、
適法な根拠が整えば
履歴照会に直接進める
運用を
検討する方向で整理が進んでいます。
✅ 「債務名義」の定義に、
先取特権の位置づけを追記する。
✅ 養育費案件の証憑(戸籍)と、
必要に応じて履歴照会へ直行できる
フローを明記する。
✅ 先取特権を根拠とする受理の
法的正当性を文書化し、照会先への
説明に備える。
あわせて、関係者への改正
ポイントの周知・研修
を行い、
新しい運用への理解を共有しておくと、
判断のばらつきを抑えることが
できます。

まとめ ― 家族法改正と照会運用の今後
📌 令和6年の家族法改正
より、養育費債権に一般先取特権が
付与される(令和8年4月1日施行)。
📌 先取特権付きの法定養育費には
従来型の債務名義がない場合があり、
先取特権自体が実質的な執行根拠と
なり得る。
📌 「債務名義必須」の一律運用は
見直され、法定養育費を例外的に
受理する方向で整理が進む。
📌 「残高→履歴」の段階制限も
見直し、適法な根拠があれば履歴
照会へ直接進める運用が検討される。
家族法改正は、養育費の確保に向けた
実務を大きく前進させるものです。
弁護士会照会の運用も、改正の趣旨に
沿って柔軟に見直されることが
期待されます。
※ 本記事は公開情報をもとに作成して
います。個別のご事情については、
弁護士・税理士等の専門家に
ご相談ください。


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2026年06月05日