【民法改正】不貞慰謝料を支払う前にやること【民法443条】

質問:A子は、B男(既婚者)と不倫をし、その妻X子から不貞慰謝料を請求されて、慰謝料150万円を支払いました。A子は、B男に払った慰謝料の半分(75万円)をもらいたいと請求(求償)したのですが、B男もX子に慰謝料150万円を払ったので、A子にお金を渡せないと拒絶しました。A子はB男に75万円を求償できるのでしょうか。
 なお、慰謝料額が適正であり、不倫についてのA子とB男の責任は半分ずつを前提とします。

1 不貞慰謝料は、不真正連帯債務です。  

 まず、不貞慰謝料は、不真正連帯債務といって、一種の連帯債務です。
 連帯債務とは、一つの債務を複数の債務者が一緒になって払う義務があるものです。
 債権者は、連帯債務者の1人を選んで、その人に全額を請求しても良いことになります。
 他方、連帯債務者1人1人から全額弁済してもらう(二重に弁済してもらう)ことはできません。
 つまり、X子は、A子とB男から二重に弁済してもらったことになります。


2 通知を怠った連帯債務者の求償の制限(民法443条)

 連帯債務者の1人が弁済した場合、その人は他の連帯債務者に対して、各人の負担割合に応じた金額を請求(求償)することができます(民法442条1項)。
 しかし、他の連帯債務者に対して、弁済する前や後に、通知しなかった場合には、求償できなかったり、求償できる範囲が狭くなってしまったりします(民法443条)

【事前の通知をしなかった場合】(民法443条1項)
 ①他に連帯債務者がいると知っていて
 ②他の連帯債務者に弁済する前に通知しなかった
 ③他の連帯債務者が、債権者に対抗できる事由(弁済や相殺など)をもっていたら
 その事由をもって、事前の通知を怠った人からの求償を拒否できる

【事後の通知をしなかった場合】(民法443条2項)
 ①他に連帯債務者がいることを知っていて、
 ②弁済した後、他の連帯債務者に通知しなかった
 ③そのせいで、他の連帯債務者が知らずに弁済しちゃったら
 その場合、③の弁済は有効とみなす。


3 B男がA子よりも先に慰謝料を払っていた場合

結論:A子がB男に75万円を求償することはできないと考えます。
理由:民法443条1項により、A子はB男に対して事前の通知をしていないので、B男の「慰謝料を先に払った(弁済)」という事由をもって、B男はA子の求償を拒めてしまいます。

なお、B男に求償できないA子としては、X子との示談交渉の中で、B男が慰謝料を払っていないことを(明示又は黙示に)表示していたら、X子との示談(和解)を錯誤取消(民法95条)し、X子から弁済した慰謝料を取り戻せる可能性がある。 

 

4 A子がB男よりも先に慰謝料を払っていた場合 

結論:A子はB男に75万円を求償できると考えます。
理由:
 まず、A子は、事前の通知をしていなくても、A子が弁済した時点で、B男は弁済していないので、443条1項の問題は生じません。
 次に、A子がB男に事後の通知をしていない(443条2項)ので、B男の弁済が有効になるようにも思えます。(B男は事前の通知をしていません)
 ただ、判例(最高裁S57.12.17判決)は、事前の通知をしていないB男は、先に弁済したA子との関係で、B男の弁済を有効とみなすことはできないとしています。
 したがって、A子がB男よりも先に慰謝料(150万円)を払っていたら、A子が弁済の前後にB男へ通知していなくても、A子はB男に求償(75万円)することができることになると考えます。

 

5 まとめ

 リスク管理の視点でいえば、A子としては、X子に慰謝料を払う前に、B男に知らせておくべきだといえるでしょう。


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2024年09月18日