【相続放棄の豆知識2】相続放棄をしても受け取って良いもの

質問:独身の叔父さんや離婚後に疎遠だった父親などが亡くなり、どうやら借金や税金滞納があるらしいということで、相続放棄をされる方が増えています。今回から相続放棄についての豆知識を解説していきます。
第2回は、「相続放棄をしても受け取って良い財産はあるの?」です。 

 相続放棄をすると、被相続人の借金の返済をしなくて済みますが、被相続人の預貯金などの財産も相続できなくなってしまいます。
 ただ、被相続人の財産であって受取れないと思っていたものが、相続放棄をしても意外と受取れたりします。
 今回は、どういうものが受取れるかをお話していきます。

※似た名前のもので受取ってはいけないものや、裁判になると受取ってはいけないものという判断になる可能性があるものもあるので、専門家に問い合わせる等、十分にお気を付けください。

 

① 生命保険の死亡保険金

 生命保険の受取人欄に、相続人の中の誰かの名前が書かれていた場合、その相続人は、相続放棄をしても、死亡保険金を受取れます。
 受取人欄に、「法定相続人」と記載されていたとしても、判例では、法定相続人が相続放棄をしたとしても、死亡保険金を受取れると判断されています。
 受取人欄の記載がない場合は、各保険会社の約款で決まります。約款で受取れる人が法定相続人となっている場合、相続放棄をしても死亡保険金を受取れます。
 なお、法定相続人が複数いる場合、各人の受け取り割合は均等になると言われています(民法427条)。

※医療保険の入院給付金や手術給付金など生前すでに発生して未給付の保険金については、相続放棄をするなら受取ってはいけません。相続放棄後も受取ってはいけません。

 

 健康保険からの一時金

 健康保険から葬祭費、埋葬料などの一時金がでる場合があります。
 これらの一時金は、相続放棄をしても受取れるものです。

 

③ 遺族年金、死亡一時金

 遺族年金死亡一時金は、遺族の生活保障のための支給金という性質があるため、相続放棄をしても受取れます。
※死亡一時金とは、国民年金や厚生年金に加入していた方が年金受給前に死亡したときに、一定の条件下で遺族に支給されるお金のことです。

 

④ 死亡退職金

 死亡退職金については、判例で、就業規則に、受取人や受取割合として、民法の相続人の範囲や割合と異なる定めがある場合には、相続放棄をしても受取れるとされています(最判S55.11.27)。
 就業規則に規程がない場合には、相続放棄をするなら受け取ってはいけない財産になる可能性があるので注意してください。

 

⑤ 香典

 香典は喪主の財産となりますので、相続放棄をしても受取れます。

 

⑥ 形見分け

 裁判例は、価値がほとんどない物品を少量であれば、相続放棄をしても受取れると判断しています。
 逆に、スーツ、毛皮、コート、靴、じゅうたんなどの遺品を持ち帰った場合、形見分けの限度を超えているとして、相続放棄の効果が否定された裁判例もあります。

 


 相続放棄前や相続放棄後に受取ってはいけない財産を受取ってしまうと、単純承認といって、相続放棄ができなかったり、債権者に相続放棄の効果を否定されてしまうことになります。

 相続放棄をするのであれば、受取っても良いかハッキリしない財産であれば、できれば受取らない慎重さも大事です。

 

【関連コラム】

相続放棄の豆知識(その1):相続放棄をしたら、次の相続人は誰?

相続放棄の豆知識(その3):熟慮期間が過ぎても、多額の借金が分かったら相続放棄をしてみたら良い

相続放棄の豆知識(その4):相続放棄をしたら、相続財産の管理はしなくて良いのか


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2024年08月29日