【相続放棄の豆知識4】相続放棄をしたら、相続財産の管理はしなくて良いの?
質問:独身の叔父さんや離婚後に疎遠だった父親などが亡くなり、どうやら借金や税金滞納があるらしいということで、相続放棄をされる方が増えています。今回から相続放棄についての豆知識を解説していきます。
第4回は、「相続放棄をしたら、相続財産の管理はしなくても良いの?」です。
相続放棄をすれば、不動産などを相続できなくなります。
それなら、相続できないのなら、空き家になった親の家も管理しなくて良いことにもなりそうな話ですが、実際はどうなのでしょうか。
令和5年4月の民法改正によって、相続放棄した相続人が空き家などを保存する責任を負う場合やいつまで保存しなければいけないかが明確になりましたので、それを見てみましょう。(民法940条)
①相続放棄時に、相続財産に属する財産を現に占有していること
相続放棄をしたけれども、親の家に住み続けているなど占有している人は、家などの財産の現状を維持する義務があります。
逆にいえば、親の家や山林を占有していない相続放棄をした人の場合には、家や山林の現状を維持する義務はないことになります。
②保存義務
まず、「保存義務」とはなんでしょうか。
保存行為とは、財産の現状を維持することをいうとされています。
それでは、誰に対して「保存義務」を負うのでしょうか。
相続放棄をしていない相続人や相続財産清算人(民法952条以下)に対して、保存義務を負います。
他方、近所の人などの第三者に対して保存義務を負うわけではありません。
いつまで「保存義務」を負うのでしょうか。
相続人や相続財産清算人に、財産を引き渡すまで保存義務を負い続けます。
③改正前(R5.4.1以前)の相続にも適用されます。
改正前に開始した相続や改正前に行われた相続放棄にも適用されます。
④相続財産が近所の人などの第三者に被害を与えた場合
相続放棄をした後も親の家を占有している場合、その家の瓦が落ちて通行人をケガさせたりしたときには、土地工作物の占有者として不法行為責任(民法717条)を負う可能性があります。
⑤相続放棄した人が占有せず、相続人もいない場合
相続財産清算人(952条以下)、相続財産管理人(897条の2)、所有者不明土地管理制度(264条の2~264条の8)を利用することになります。
それぞれ特色や注意点がありますので、改めて別の機会にお話したいと思います。
このように、相続放棄をした場合、その財産を使ったりするなどの占有をしていれば、管理責任を負います。
他方、相続放棄した方が占有していなければ、管理責任は負わないことになります。
ただ、相続放棄した方が占有していなかったら管理責任を負わないので、荒廃した不動産が放置される問題も起きています。
この問題に対処するために、所有者不明土地管理制度が新設されていますので、近所で荒廃した危ない空き家があるような場合には、お近くの自治体等で相談してみてください。
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