【相続放棄の豆知識5】祖父の遺産だけを相続して、父の負債は相続しないことができる場合もあるのか?【再転相続の相続放棄の順番】

質問:祖父が1000万円の遺産を残して死亡し、その1か月後に、借金まみれの父が祖父の遺産を相続するとも放棄するとも決めずに死亡した。私は、祖父の1000万円を取得し、父の借金は相続放棄で引き継がないということができるのでしょうか。
第45回は、「相続放棄の順番を間違えなければ、1次相続(祖父)で遺産をもらいながら、2次相続で債務を承継しないことができる場合があるのか?」です。 

 今回は、レアケース(ごくまれ)のお話となりますので、自分に当てはまる方は多くないと思います。

 今回の話に該当するのは、
①1次相続(例、祖父が死去)→②3か月以内に2次相続(例、父が死去)
という場合になります。(ケース1)

 つまり、①祖父がプラスの遺産を残し、②父に多額の債務がある場合、①だけを相続し、②は相続放棄で相続しないということができるのかどうかが問題となります。

【A説】
 A説は、まず①1次相続を承認し、次に②2次相続を相続放棄する流れであれば、①祖父の1000万円を取得しながら、②父の債務を払わずに済むことができるとします。

 A説の説明では、最高裁昭和63年6月21日判決の法理論を前提とすると、相続人(孫)には、1次相続(祖父)、2次相続(父)それぞれの相続について、相続を承認するか放棄するかを選択できる権限を有していると考えられるので、1次相続(祖父)を承認した後で、2次相続(父)を放棄することもできるということになります。

 ただし、A説でも、この承認と放棄の順番を間違うと、祖父の遺産は取得しながら、父の債務は払わないということができなくなります。

(A説に基づく正しい順番)
①1次相続を承認する。→②2次相続を相続放棄する。

(A説に基づく間違った順番)
①2次相続を相続放棄する。→②1次相続を承認する。
※2次相続を放棄した時点で、1次相続の承認・放棄をする権限を失う。

【B説】
B説は、A説のように、相続人は、1次相続(祖父)、2次相続(父)それぞれの相続について、相続を承認か放棄する選択権を持っているので、先に1次相続(祖父)を承認してから2次相続(父)を放棄することはできる。
しかし、1次相続(祖父)を承認したところで、遺産は祖父→父と移動するので、2次相続(父)を放棄すれば、相続人は祖父の遺産を取得できなくなるとしています

注釈民法には、「第1次相続を承認、第2次相続を放棄することは無意味であると指摘がある」とB説を採るような記述があり、第1次相続(祖父)の遺産は取得できない結論になりそうです。

ただし、注釈民法は続けて、第1次相続(祖父)の承認後に、第2次相続(父)に相続債務が見つかったとき相続放棄をするという場合であれば、相続債務を引き継がないという点で意味があるのではないか、と述べています。

このように、B説であれば、祖父の遺産だけを取得することはできそうにありません。

【ケース2】
それでは、祖父に借金があり、父に遺産がある場合はどうでしょうか。

①1次相続を放棄する。→②2次相続を承認する。

①2次相続を承認する。→②1次相続を放棄する。

ケース2の場合は、どちらの順番を採用しても、祖父の借金を払わず、父の遺産を取得することができます。

 

なお、【ケース1】も【ケース2】も最高裁判例はありません。
後の判例次第では、結論が変わる可能性があることに注意してください。
特に、【ケース1】は要注意です。

 

 

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2024年10月23日