【民法改正】空き家問題の新たな制度【所有者不明土地・建物管理制度、管理不全土地・建物管理制度】

質問:
 近所に荒廃してしまった空き家を見かけるようになったという方もおられるかもしれません。荒廃した空き家が倒壊するなど近所の住民に被害を与える可能性もあります。
 今回は、民法改正にともなって、所有者不明の場合や所有者が管理しない空き家等の管理を裁判所を使ってやってもらう新制度について解説していきます。

 所有者がわかない土地・建物や、管理不全状態の土地・建物は、倒壊したり、ゴミ屋敷になったりするなど近隣に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これまでも、不在者財産管理人制度(民法25条以下)や相続財産管理人制度(改正法「相続財産清算人制度」民法936条・952条)がありましたが、使い勝手が悪いなどの理由から十分に利用されてきませんでした。

 令和5年4月の民法改正によって、特定の所有者不明土地・建物や管理不全土地・建物を管理・処分できる制度が設けられましたので、それを見てみましょう。

 


有者不明土地・建物管理制度

 ちゃんと探しても土地・建物の所有者が分からないとか、所有者の所在が分からないという場合、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができます。

 これまでも、「不在者財産管理制度」がありましたが、問題になっている土地・建物の管理だけでなく、不在者の預貯金・不動産など財産全てを管理しなければいけない制度であったため、問題の土地・建物が共有であり、複数の共有者が不明の場合、複数人の管理人を別々に選任してもらわなければならず、お金も手間もかなりかかっていました。

 新たな制度では、共有の土地・建物であっても、その土地・建物について管理人が選任されるので、管理人1人の選任で足り、選任のお金や手間も減らせることになります。

 所有者不明土地・建物の管理人は、裁判所と相談して修繕したり、裁判所の許可を得て大修繕・取り壊し・売却をすることができます。

 

 

管理不全土地・建物管理制度

 所有者はいるが、所有者による管理が不十分であって、周りに迷惑をかけているような土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができます。
 
 所有者不在土地・建物管理制度と違って、「所有者」はいますので、管理人の選任や管理人が建物の大修繕や取壊すなどの場合には、所有者の意見を聞いたり、所有者の同意が必要になります。

 そのため、所有者が管理人の選任を強く拒んだり、管理人が倒壊しそうな建物を取り壊そうとすることに同意しなかったりすると、適切な管理ができないこともありえます

 他方、ゴミ屋敷のごみを撤去したり、落ちかけの屋根瓦を修繕したりする程度であれば、所有者の同意がなくても、裁判所と相談したり許可を得たりした上で行うことができます。

 なお、所有者が取り壊しに同意しない場合には、倒壊して隣家に被害を与えそうな建物等の一定の要件を満たすのであれば、空き家法の「特定空き家」の指定を受けられますので、自治体から所有者に修繕勧告を出してもらったり、行政代執行により建物を取り壊してもらう(空き家法14条9項)という対応も可能です。

 

 

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2024年09月11日